2013年6月6日木曜日

ノーウッド手術・両方向性グレン手術

ついに手術の日。
朝8時20分にオペ室に移動とのことなので、7時半頃NICUへ。
リサは朝4時を最後に断食なので、お腹が空き始めて、ちょっとご機嫌斜め。
病室内を3人で散歩したり、歌を歌ったりして紛らわす。
いよいよ移動の時間。手術室のある3Fまではパパが抱っこして行った。入り口の前で箱のようなベッドに寝かされて手術室へ。
頑張ってね!と送り出す。

後で看護師さんに聞いたところ、「最初はちょっと泣いたんですが、オペ室の看護師さんに抱っこされたら泣き止んでにこにこしてました。かわいー!って言われてましたよ」。

オペ室では、大勢の医師や看護師さん、技師らが待機していることだろう。
夕方ぐらいまで、とのことなので、4Fの休憩室に陣取る。
じいじばあばたちも合流し、それぞれ新聞や本を読んだり、スマホをいじったりして時間をつぶす。
手術が終わったら呼び出しがあるわけではないので、終わりそうな時間を見計らって手術室の前へ。16時ぐらいに行ってみると、看護師長さんが「モニターで見たら、そろそろ終わりそうですよ。心臓がいい色で動いてます」と教えてくれた。とりあえず、人工心肺を離脱して自身の心臓が動いているということで一安心。
17時ぐらいに、執刀したS先生と、主治医のK先生が出てきて、大きな部分は終わったことを告げられた。
ただ、S先生は、開口一番「ノーウッド・グレンの手術は終わったんだけど、肺動脈の圧が高くて、20以上あるんだよね。手術前は12−3だったんだけど。これが手術のせいで高くなっているのか、他に原因があるのかわからないから、様子を見た方がいいです。」
疲れているのか、少し壁に寄りかかりながらS先生は5分ほど説明をして、それじゃ、と去って行った。
話の内容は半分ちんぷんかんぷん。
その後30分もしないうちに、先生はスーツ姿でコロコロを転がして帰って行った。

とりあえずはほっとした。無事に手術が終わった。後は、別の先生方で、止血やいろんな処置をしているはず。
ようやくICUに移動したと告げられた時には、20時を過ぎていた。
ICUのベッドに寝かされたリサは、案の定顔が腫れて、上半身がむくんでいた。10個以上の点滴、鼻からは人工呼吸器。覚悟はしていたけど、痛々しい姿。
I先生が、前日とはうってかわって厳しい顔つきで立っていた。不安になる。
「ご覧の通り、顔がむくんでいます。肺の血圧も高いです。カテーテルの検査では12ぐらいだったし、手術前にS先生とも一緒に測ったときも同じぐらいでした。それが今は20以上あります。本来は10−15ぐらいじゃないといけないんです。これが手術の後にはいろんな影響で一時的に上がることがあるので、2、3日様子を見ます。下がらないようだったら、どこかに狭窄があると思われるので、もう一度カテーテル検査をして原因を調べて、再度手術をすることになるかもしれません」と言う。

予定していたDKSではなく、ノーウッド手術になった。
※詳細は後ほどリサパパが追記
念のために連絡先を確認された。
一応、予定していた内容の手術は終わったとは言え、経過に不安が残る状態で、終わった!と喜べない。
死ぬほど疲れた1日。気付いたら歯を噛み締めすぎて顔中の筋肉が痛い。

【追記】
実際に行われた手術は、以下の通り。
おおよそ、事前に聞かされていた作戦通りだったが、リサママの記述の通りDKS手術ではなくノーウッド手術が最終的には選択された。
  • ノーウッド手術(Norwood Procedure)
  • 両方向性グレン手術(Glenn Procedure)
元々のリサの左心室(1)・大動脈(2)はここまで低形成ではなかったが、左心室が従来の働きをしていないという意味では、一般的な以下の図の左心低形成症候群といわれる心臓のような状態でリサは産まれてきた。

今日の手術までに2度手術を行ってきたが、最初に行った手術が両側肺動脈絞扼術(2)で、その後行ったカテーテルでの手術が、動脈管ステント留置術(1)だった。すなわち、今日までのリサの心臓は以下のような状態にあった。

そして、満を持して本日の手術日となった。
リサが手術を無事乗り切れるだけの体力がつくまで、そして術中のリサの心臓への負担を少しでも軽くし手術が成功するようにするため、今日までリサの成長を待った。
これまでの二回の手術も姑息手術であったが、今回の姑息手術は、根治手術までの本当に大きな折り返し手術であり、心臓を一時的に止めるもっとも難しい姑息手術でもあった。左心低形成症候群の姑息手術の成功事例とリサ自身の状態から、ノーウッド手術と両方向性グレン手術を同時に行うことになったわけだが、だんだん知識が付いてきた自分にも、この手術の有効性と堅実さが分かるようになってきた。

大動脈と肺動脈を繋げていた動脈管(ステント)を、それぞれ肺動脈、大動脈から切り離し、肺動脈側の開いた箇所は、リサの心膜を充て縫合し、大動脈側は切断し縫合した模様。そして心臓からの肺動脈を細めの大動脈の補佐的な役割へと変貌させ(1)、動脈へ血液を送り出す役目をこの新しくなった心臓に担わせる。直前のカテーテルの手術・検査で広げた卵円孔周りの心房中核も切除し、肺から戻ってくる赤いキレイな血液の通り道を確保する(3)。これが自分が理解している今回行われたノーウッド手術だ。
※(2)は今回存在しない。

そして心臓側からはなくなってしまった肺への経路だが、上肢側の静脈を心臓を還さずに肺へとサラサラと流れるようするため行ったのが、両方向性グレン手術だ(1)。


つまり、リサの心臓へは静脈からの血は下肢側からのみ流れている状態となり、心臓内で酸素を多く取り込んだ肺からの赤い血と混ざり合って全身へと流れていくかたちへと今回の手術で変わった。心臓から上肢側へ流れた血流のみグレン手術で形成したルートを通って直接肺動脈〜肺へ戻ってくることとなる。その結果、リサの体内の酸素飽和度は術前よりも低い値となりチアノーゼが起こることとなる。

今回の手術で得たものは、体全体へ血液を送り出す左心室・右心室が繋がった心臓だ。
この新しい心臓は、肺へ血を送ることは気にしなくていいため、ひたすら全身へ血を送り出すことに専念すればいい。結果、心拍数が落ち着き心臓への負担が軽くなるようだ。
逆に失ったものは、酸素飽和度だ。
この酸素飽和度を取り返すために、この手術を乗り切った先の根治手術であるフォンタン手術を目標にまた成長を待つことになる。

今回先生たちが判断して行った術式は、同時にノーウッド手術と両方向性グレン手術を行うものであったが、新生児の状態でノーウッド手術を行い、その数ヶ月後に両方向性グレン手術を二回に分けて行うよりは、様々なリスクを解消できるといういままでの積み上げからの判断に他ならない。先生たちの日々の研究・努力、そして全ての左心低形成症候群のこどもたちに心から感謝したい。

もちろん、リサの手術の執刀して下さったO大学のS先生、S大学の循環器チームの全ての先生たちに感謝したい。リサはまだ術後の閉胸はされておらず、戦いは始まったばかりだ。

リサ、またあの笑顔を振りまいてくれる日を楽しみに待っているよ!

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